The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳
Ⅳ 1944・9月12 ピータ・ジョウンズで昼食を摂り、ヘンリの勉学の為に新しいラムプを買った。他の婦人たちに囲まれた取り済ました昼食。何処にも男はいない。それは、大勢の内の一部分になることに似ていた。殆ど平和といった感じ。その後、ピカディリの新しい映画に行って、ノーマンデ...
Ⅳ 1944・9月12 ピータ・ジョウンズで昼食を摂り、ヘンリの勉学の為に新しいラムプを買った。他の婦人たちに囲まれた取り済ました昼食。何処にも男はいない。それは、大勢の内の一部分になることに似ていた。殆ど平和といった感じ。その後、ピカディリの新しい映画に行って、ノーマンデ...
国王は、彼の約束をどのように守ったか?私は思い出せたらと願う。私は、べキットゥの墓の上で修道士に彼を鞭打たせるよりもっと、彼について何も思い出せない。それは、答えのような響きがない。それは、前に起こらなければならなかった。...
彼がそれを愛せれば、それには、心惹かれるに違いない。私の心の中、そこに少しでも心惹かれるものがあるということ、それは、余りにも多くを私に信じるよう求めている。私は、私を称賛する男が欲しいが、それは、貴方が学校で学ぶ癖です―目の動き、声音、肩とか頭の上の手の感触。もし彼らが思...
貴方は、私にD.と一緒に逃げ出そうとさせながら、それを楽しむことを、私には許さない。貴方は、私に愛を外へ追い払わせ、その後で貴方は言う。そこにも又、貴女が求める渇望はない。貴方はいま、私にどうして欲しいのか、神よ?私は、ここから何処へ向かうのか?...
私が、私の肩に挟み込んだ受話器を取ると、交換手は言った。「私共は、只今貴方の番号にかけています。」私は神に言った。もし彼が応答すれば、私は、明日戻ります。電話は、彼のベドゥの傍の何処に置いてあるかを、私は正確に知っていた。一度私はそれを私の睡眠中にぶつかって落とし、げんこつ...
ヘンリは、市長やエンジニアと一緒に二等私室の中に先頭に立って入って行ったが、私はその長官を引き止めた。彼の腕に触れ、スチールの寝棚に関し、そこに既婚者用のダブルの寝棚がなかったのは何故かについて、何か馬鹿げたことを彼に質問しながら。私は、私にキスをして欲しい、と言おうとした...
只、私が動こうとするという意識を持てば、彼はそれに応える。私は、何故しようとしないのかしら?私は見知らぬ人と約束したことはなく、モーリス一筋だった。ヘンリと一緒にわたしの残りの人生を、一人寂しく過ごせない、誰も私を認めず、誰も私に刺激されず、ヘンリが他の人と話す事に耳を傾け...
ヘンリは、寡婦年金が、それが十年前と同じ重さに達する、もう一シリング上げられるかどうかについて統計だらけのマロックとの長い議論を始めた。彼らは、生活費について争い、それは、非常に学究的論争だった。彼らは揃って、国は、ともかく、それを値上げする余裕がない、と言った。国家安全省...
彼は、福音書の書かれた年代に関して話し、如何に早いものであろうと、クライストゥが生まれて百年以内に書かれてはいない。私はそうしたものが、それ程早いと認めたことはなかった。それにしても、私は、伝説が始まった時、それは、実に重要だということを見ようがなかった。次に彼は私達に、福...
1944.7月9 ヘンリと一緒に8.30に間に合った。空席の目立つ一等客室。ヘンリは、イギリス委員会の議事録を声を出して読んだ。パディントンでタクシを捕まえ、ヘンリを省で降ろした。今夜家にいるよう、彼に約束させた。タクシ乗務員は、間違って、私を14番を過ぎた南側に運んだ。ド...
親愛なる神よ、と私は言った―何故親愛なる、何故親愛なるか?―私に信仰させる。私は信仰する筈がない。私を作り替えて下さい。私は言った。私は意地悪でペテン師で、私は自らを退けます。私は私自身のことは何も成し得ません。私に信仰させて下さい。私はきつく私の目を閉じ、私の爪を私の手の...
二人が互いに愛し合った時、彼らは、キスに於ける愛情の欠如を偽装出来ず、彼の手に触れて、そこに残されたその僅かな息遣いがあるかどうか、見極めようとしなかったのか?もしも私が彼の手を取り、それを私の方に引けば、それは、ドアの下から、全て自ずと隔たろうとすると分かっていた。今やっ...
私は、何故「親愛なる神」と書くのか?彼とは親しくない―私にとってではなく、彼はそうではない。もし彼が実在するなら、その時には、彼は、私の心の中にこの誓いという考えを入れ込み、だから私は、その所為で彼を遠ざける。数分毎に、灰色の石造りの教会や酒場がその輪郭を崩して後方に駆け抜...
私は自分のをしょっちゅう忘れる。フロイトは言うだろう、それも、ヘンリの番号だから、それを忘れようとするのだ。しかし私はヘンリを愛す。私は、ヘンリに幸せになって欲しい。私は、只今日、彼を避けるだけ、彼は幸せで、私は背を向け、モーリスは背を向ける、つまり彼は物事を知ろうとしない...
昨日、私が彼を待っている間に、共有地のとある場所に演説者が現れた。I.L.P.(独立労働党)と共産党、それに冗談ばかり言う男、又、そこには、クライストゥ教を攻撃している一人の男がいた。南ランダン合理主義者協会、或いはそれに似た何らかの名称。彼は、片頬を覆った痣さえなかったら...
仮に、時々彼が女を買えば、私は文句を言うの?もし私たちがそこで互いを所有出来なくても、不毛の地にあって、どんなつましい付き合いからも、彼を奪い取りはしない。時に、もし時が来たら、彼は一杯の水さえ拒もうとするに決まっている、と私は思う。彼は、私を、何一つ誰一人傍に寄せず、一人...
もし私が、彼を安心させられさえしたら、それで私たちは、穏やかで、幸福で、無作法でも不摂生でもなく愛せる。そうして不毛の地は、視野から後退する。命ある内は、多分。 もし人が神を信じられるとしたら、彼は不毛の地を満たそうとするか?...
それから、僕は初めから帳面に取り掛かった。彼女は、毎日、日記に記入していなかったし、僕は、全ての記載を読もうとは思わなかった。彼女がヘンリと一緒に行く芝居、レスタラントゥ、パーティ―僕が何も知らないその暮らしの全ては、未だに傷付ける力を持っていた。 Ⅱ 1944・6月12...
1946・2月12日 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来...
BOOK THREE Ⅰ ・・・何もかも通り過ぎる、そうして私たちは終わってしまった。貴方(神)以外は。私たちのどちらかの所為ね。私は、ひと時、ささやかな恋心を、費やしながら、それを、こちらへ又あちらへと外へ向かって、この男そしてあの上へと手を伸ばしながら、命ある時を夢中で...