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The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

執筆者の写真: 成田悦子成田悦子

僕は歩道に立ち止まり言った。「貴女はストゥランドゥに行くつもりでしょ?」

 「いえ、レスター・スクェアへ。」

 「僕はストゥランドゥへ行くつもり。」彼女は出入口の中に立っていた。通りは閑散としていた。「僕は、ここでグッドゥ‐バイを言おう。貴女に会えて良かった。」

 「そう。」

「貴女が都合がよければ、何時でも僕に電話して。」 僕は彼女の方へ動いた。僕の足下に格子(排水口)の感触があった。「サラー」僕は言った。彼女は彼女の頭を、鋭敏にあちらへ向けた。例えば誰かが来れば見るために、例えばそこに時刻があれば見るために彼女は確かめているかのようだった・・・しかし彼女がもう一度曲げた時、咳が彼女を襲った。彼女は出入口の中で、体を二つに折り曲げ、咳き込みそして咳き込んだ。彼女の目は、それに連れ赤くなった。彼女の毛皮のコウトゥに包まれ、彼女は窮地に追い詰められた小さな動物のように見えた。

 「気の毒だね。」

 僕は酷にも言った。まるで僕が何かを奪われて来たかのように。「それじゃあ、付き添わなきゃいけないね。」

 「そんな、只の咳よ。」彼女は彼女の手を差し伸べて言った。「グッドゥ‐バイ―モーリス。」その名前は辱めのようだった。僕は「グッドゥ‐バイ。」と言いはしたが、彼女の手を取らなかった。僕は脇目も振らず、急いでいる印象を与えようとして、大急ぎで歩いて離れた。そしていなくなるとほっとした。

それから僕がもう一度咳が始まるのを聞いた時、僕は節を、何かしら陽気で、冒険的で、幸せそうな、口笛で吹けたらと願った。それにもかかわらず、僕は音楽を求める耳さえ、持ち合わせなかった。

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