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The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

執筆者の写真: 成田悦子成田悦子

 「貴方は、少しは祈りの言葉を知っていますか?」

 「いいえ。」

 「貴方が信仰しない神に祈ること、それは好ましいとは思えない。」

 僕は、家から出て、彼に付いて行った。ヘンリが起きるまで残っても、そこには、何の利点もなかった。多少早くとも遅くとも、彼は、彼自身に基づいて存在することに直面するしかなかった、まさに僕がそうして来たように。僕は、僕の前を、スマイズが共有地を横切って、彼の道を急にせかせか動くのを見守った。そこで僕は思った、ヒステリカルなタイプだと。不信仰は、まさに信仰同様、多くは興奮の所産である筈。大勢の人々の通行が、それを溶かしてしまった所の雪の泥濘(ぬかるみ)が、僕の靴底からじわじわ滲みて、僕の夢の雫を僕に思い起こさせはしたが、「気を遣わないで、」と言っている彼女の声を思い出そうとした時、僕が音の響きを求めても、空虚な記憶を抱き締めるだけと気付いた。僕は、彼女の声を真似られなかった。僕は、それを風刺さえ出来ず、僕はそれを思い出そうとした時、それは、匿名だった―まるで何処かの婦人の声。彼女を忘れることの手順は、整った。僕たちは、写真を保存するように、蓄音機レコードゥも保存すべきだ。僕は、ホールの中へと、壊れた階段を上った。何一つなくとも、ステインドゥ・グラスは、1944のあの夜と同じだった。誰ということではないが、何らかの兆しに感付く。サラーは、彼女が僕の死体を見た時、終わりが来た、とまともに信じた。終わりは、随分前に始まっていた、と認めようとはせず、この、或いはあの不十分な理由の為に、益々減った電話の呼び出し音、恋の終わりという危険を、僕が察知したために僕が彼女に仕掛けた口論。

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