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  • 執筆者の写真成田悦子

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は、少しは祈りの言葉を知っていますか?」

 「いいえ。」

 「貴方が信仰しない神に祈ること、それは好ましいとは思えない。」

 僕は、家から出て、彼に付いて行った。ヘンリが起きるまで残っても、そこには、何の利点もなかった。多少早くとも遅くとも、彼は、彼自身に基づいて存在することに直面するしかなかった、まさに僕がそうして来たように。僕は、僕の前を、スマイズが共有地を横切って、彼の道を急にせかせか動くのを見守った。そこで僕は思った、ヒステリカルなタイプだと。不信仰は、まさに信仰同様、多くは興奮の所産である筈。大勢の人々の通行が、それを溶かしてしまった所の雪の泥濘(ぬかるみ)が、僕の靴底からじわじわ滲みて、僕の夢の雫を僕に思い起こさせはしたが、「気を遣わないで、」と言っている彼女の声を思い出そうとした時、僕が音の響きを求めても、空虚な記憶を抱き締めるだけと気付いた。僕は、彼女の声を真似られなかった。僕は、それを風刺さえ出来ず、僕はそれを思い出そうとした時、それは、匿名だった―まるで何処かの婦人の声。彼女を忘れることの手順は、整った。僕たちは、写真を保存するように、蓄音機レコードゥも保存すべきだ。僕は、ホールの中へと、壊れた階段を上った。何一つなくとも、ステインドゥ・グラスは、1944のあの夜と同じだった。誰ということではないが、何らかの兆しに感付く。サラーは、彼女が僕の死体を見た時、終わりが来た、とまともに信じた。終わりは、随分前に始まっていた、と認めようとはせず、この、或いはあの不十分な理由の為に、益々減った電話の呼び出し音、恋の終わりという危険を、僕が察知したために僕が彼女に仕掛けた口論。

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将校の家の正面の壁が吹き飛ばされ、通りの向こう側の家々は廃墟になっていた。ナム・ディンから川を下りながら、何があったかペラウドゥ中尉から僕は教えて貰った事がある。彼は真面目な若者、フリーメイスン、そして彼にとってそれは彼の会員達の盲信への審判に似ていた。ファトゥ・ディエムの主教は嘗てイウアラプを訪れ、そこでファティマの聖母マリアに対する信仰を得たー姿を見せた聖母マリアの有様、だからロウマン・カサリ

僕は夜明け前にナム・ディンから上陸用舟艇で入った。僕達が海軍基地上陸できなかったのはそこは60ヤーズの範囲を完全に包囲した敵によって切り離されていたから、そこでボウトゥを上げて燃え上っている市場の側に駆け込んだ。僕達は炎の明かりの中で容易な的だったがある理由のために誰一人燃えなかった。全ての物が燃えている露店のドスンと倒れる音とパチパチという音を除いて。川の辺でセニガールの歩哨が彼の構えを変えるの

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