僕は言った。「それは人が笑っていいようなことではない。喩え思うことは、取り留がなくても・・・」
彼は待ち望んでいたかのように、僕に尋ねた。 「そりゃあ、取り留めはない。貴方は僕が馬鹿だと思いもするでしょ・・・?」
ちょっと前なら、僕は進んで笑いもしただろう。そう今でさえ、僕が只々嘘を吐くしかない時、以前の様々な妬みが甦った。夫と妻は、人が妻を憎めば、人は夫も憎まずにはいられない、それ程までに切っても切れない骨肉なのか?彼の質問は、彼が騙すには、どんなに気楽だったかを、僕に気付かせた。余りにも安易だから、窃盗罪を共謀するホテルのベッドゥルームに、ばらの覚書を置き忘れる男を好む、彼の妻の不貞に、彼は僕を、凡そ密通者のように思い、僕は嘗て、僕の恋人に良くして来たその資格故に、彼を憎んだ。
彼のジャキットゥの袖が、ガスの前で蒸気を上げているのに、彼は繰り返した。尚も僕から目を反らしながら、「勿論、貴方が僕を愚か者だと思たって、僕は気にせずに話す。」
その時、悪魔が話した。「ああいや、僕は貴方が愚か者だとは思わない、ヘンリ。」
「貴方は、そんなことは・・・出来る、と本当に思っているということ?」
「勿論、そりゃあ出来ます、サラーは人間だ。」
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