それから、僕は初めから帳面に取り掛かった。彼女は、毎日、日記に記入していなかったし、僕は、全ての記載を読もうとは思わなかった。彼女がヘンリと一緒に行く芝居、レスタラントゥ、パーティ―僕が何も知らないその暮らしの全ては、未だに傷付ける力を持っていた。
Ⅱ
1944・6月12
時に、私は彼を愛しているし、永遠に彼を愛す、と彼を納得させようとすると、本当に疲れ果ててしまう。彼は、法廷弁護士のように私の言葉を攻撃し、それを曲解する。もし私たちの恋が終われば、彼の周りを囲むに違いないその不毛を、彼は恐れている、と私には分かる。それなのに、私が丁度同じように感じていても、彼は理解しようとしない。彼が声を出して何を言っても、私は黙って私自身に言い聞かせ、そのことをここに書く。一人では、不毛の地に何も築くことは出来ないのか?時に、私たちが何度も愛を育んだ一日の後、私は、性の終わりに至る、それが可能かどうか危ぶむ。彼も又、訝しく思い、不毛が生じるその地点を恐れている。もしも私たちが互いを見失えば、その不毛の地に居て、何をするのか?一人で、その後どうして生き続けるのか?
彼は、過去や現在や未来を嫉妬する。彼の愛は、中世の純潔ベルトゥに似ている。彼は、私と一緒にそこにいて、私に包まれている時だけ、彼は何とか安心する。
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